株式会社日本リモナイト 環境事業部研究開発課 課長 辻誠

事業の背景

(株)日本リモナイトは、1966年に褐鉄鉱石鉱山として稼働し、事業がスタートしました。その後、酸化鉄が硫化水素吸着剤としての効果が認められたことから、鉄分を多く含む阿蘇黄土「リモナイト鉱石」を脱硫剤の原料として供給するようになり、脱硫剤メーカーとして大手企業のOEM生産を行ってきました。この「リモナイト鉱石」の吸着効果に着目し化学的分析を行い、他用途への展開を模索したところ、「臭い」を吸着する効果があることを発見しました。この効果を応用して、畜産物の排出物の臭いを軽減するリモナイトを含んだ自然由来の飼料を開発し、畜産分野へと進出し事業を拡大してきました。

現在では、同社の脱硫剤は国内第2位のシェアを誇るほか、水質浄化剤・ペットフード・セラミックタイル・石けんなど様々な商品を展開しており、毎年着実に売上げを

伸ばしています。

〔乾燥処理のため野積みされた阿蘇黄土〕

〔阿蘇黄土〕

挑戦とK-RIPの有効活用

 

K-RIPプロジェクトの活用

同社は平成15年1月にK-RIPへ入会しました。平成15年度には、K-RIPプロジェクトに採択され、「使用済み脱硫化水素剤のリサイクル」について実証研究を行い、実用化に成功します。平成20年度、K-RIPプロジェクトに再びチャレンジし、脱硫化水素剤をリサイクルした場合の物流コストの計算やリサイクル拠点の展開方法などについて調査を行い、事業化するための足固めを行いました。その結果、従来の脱硫装置では、使用済み脱硫剤の取り出し作業にコストと時間を要していたため、「カートリッジ式」という新しい発想を取り入れ、脱硫剤の着脱が簡単な脱硫装置を開発しました。平成24年度にもK-RIPプロジェクトを活用し、カートリッジ式脱硫装置の全国展開に向けたビジネスモデルを確立しています。同社は、下水処理場や(食品工場等における)廃水処理施設に設置されている脱硫装置がカートリッジ式に変われば、脱硫等の劣化防止やランニングコストの削減に繋がると見込んでおり、今後国内の処理施設に対して営業活動を強化していく予定です。


〔カートリッジ式脱硫装置〕


〔脱硫剤〕

環境ビジネスアライアンスマッチングセミナーの活用

カートリッジ式の脱硫装置事業を国内展開するため、平成24年度に全国7カ所(山形・仙台・浜松・大阪・岡山・福岡・沖縄)で開催された「環境ビジネスアライアンスマッチングセミナー(注)」に参加し、現地でのプレゼン・商談に臨みました。まだ商談成立には至っていないものの、大手飲料メーカーほか数社との商談が進行中であり、見積もり算定などの細かな調整を行っているところです。

(注)「環境ビジネスアライアンスマッチングセミナー」は、東北・浜松・近畿・中国・九州・沖縄の支援機関が連携し、他地域企業とのアライアンス(技術提携、販売網開拓等)を希望する企業同士をマッチングする事業。マッチングにあたっては、各地の支援機関のコーディネーターがそのネットワークを活かして、パートナーを発掘する。

海外展開支援事業の活用

同社は海外展開にもチャレンジし、平成21年度の韓国ミッションに参加しています。同ミッションでは、蔚山大学や現地企業と意見交換を行い、その後ペットフードや脱硫剤の需要などについて検討を重ねました。その後、蔚山大学とMOUを締結し、水質浄化や臭いの問題などに連携して取り組み、平成24年度韓国政府の補助金事業に参画しています。 平成24年度、韓国での畜産用飼料の原料として、輸出を開始しました。

将来のヴィジョン

脱硫剤の販売が好調で毎年約10%ずつ売上げを伸ばし、上海ガニの養殖場向けに水質浄化剤を輸出するなど、海外展開も着実に進んでいます。

新たな挑戦としては、現在熊大などと共同して「リモナイト」の脱色効果を研究しており、将来的には、排水(家畜し尿などの排水)色素の成分分解を実現する商品を開発予定です。

さらに、今年度は、東日本に新たな拠点(脱硫装置に充填するカートリッジのリサイクル拠点)をつくる予定で、さらなる事業拡大に向けた「飛躍」の年になりそうです。

企業名
株式会社日本リモナイト
代表者
環境事業部研究開発課 課長 辻誠
創業
1966年
資本金
1億円
住所
熊本県阿蘇市狩尾289番地
主な事業
リモナイトを原料とした環境浄化製品(脱硫剤、農業用土壌活性土、畜産用飼料、水質浄化剤、ペット用健康補助食品など)